2005年11月2日、株式会社エキサイトがJASDAQ上場一周年を迎えました。
社長の山村さん、そしてスタッフの皆さん、本当におめでとうございます。
コミュニティ形成に役立つサービスに支えられ、ユーザも様々なコミュニケーションを楽しんでいます。この「日刊エキブロ新聞」もユーザの自発的な企画ではありますが、エキサイトに提供されたブログという場所や道具があって初めて成立しています。感謝とともに、エキサイトの今後の益々の発展を祈念します。
さて、「日刊エキブロ新聞」特集企画の第一弾は、この上場一周年の機会に、エキサイト社長、山村幸広氏のCNET Japanに掲載されたインタビューを記事に取り上げられた
harryblog(ハリー)さんとの対談です。
ハリーさんは2004年3月からのエキサイト・ブログサービスのユーザであると同時に、IT人、企業人という視点からもエキブロでのブログコミュニティ形成を見守っていらっしゃいました。記者周辺のエキブロ・コミュニティでは「おやっさん」として親しまれているハリーさんのエキブロ観をうかがいます。(対談日:2005年11月5日 記者
raphie)
harryblogさんとの対談
「エキサイト上場一周年:これまでのエキブロ これからのエキブロ」
ハリーさんがエキサイトでブログを始めたのは昨年の3月ということですが、その頃のエキブロの印象をお聞かせください
「ワシで8千番台でしたが、サービス開始が2月はじめで、その1ヶ月の遅れを取り戻そうと一生懸命歩きました。初めから女性が多い、というか発言力ありまして、それが新鮮でした。たまにPTAに出ることになった父親みたいなもんです」
その頃からブログとコミュニティ形成というのは、一般的に結びついているものだったのでしょうか?
「ええ、それ以前からブログというムーブメントには興味があって、いわゆるアルファギーク達が面識も無いのに議論しているのを羨ましいと思っていた。それが、実際エキブロに入ってみると普通の主婦達が井戸端会議しているような感じで、他では知ることのない世界に触れて驚きましたが、ちょっとずつ近付いてみると、暖かく受け入れてくれて嬉しくなった、ってところです。(ブログは)3~4社に作って比較しましたが、(エキサイトは)機能は少ないけど操作性が一番よくて気に入ってました」
エキブロの使いやすさは、間口を広げることとコミュニティ形成に役立っています
「2ヶ月ぐらいしてからかな?懇意にしてくれたカリスマの女性が荒らしにあって、鍵で相談されたんだけど、力及ばず、結局閉じることになった。という事件があって、それからですね。ユーザー同士の団結と会社への要求ということを考え出したのは」
開かれたコミュニティの弱点でもありますね
「うん、外から見ると楽しそうだから邪魔してやれ なんて奴も出てくるのだな」
このようなコミュニティは利用する個々人の良心に支えられていると同時に、緊急時の会社のサポートという意味で、ユーザと会社間の信頼関係も必要に思えます
「(2004年)7月まではβ版だったから、しょうがないな、という感じだったのですが、正式オープンへの移行でもちょっとしくじった。メンテ終了予定を大幅に越えて、アナウンスもされない。機能的にも期待に応えたとは程遠い。それで、その後から、
エキブロメディカルや
ヨコの会などの連帯ブログが出てきたんだよな」
ユーザにとって必要な情報が、的確な方法で伝えられていないという問題は今でも感じることがありますが、ユーザ側がまとまって会社側に声をあげる機能が整っていたこともまたブログの面白さの一面ですね
「うん、誰かが旗を揚げると、次々に集まった人達がそれぞれできる役割を担い、意見を交わしながら創っていく、というのはブログならではですね。でも、それはやはりそれ以前の交流の中で気心を知っていたから可能だったのでしょう。そしてそれは、コミュニティ志向のエキブロだったから、とは言えるかも」
エキブロがコミュニティ志向というのは、どのようなところに感じますか?会社側から提供されるものは、他のブログサービスとそれほど変わらないように思うのですが、どうしてエキブロではこんなにコミュニティが発達しているのでしょう
「もともとエキサイトは女性ユーザー向けのサービスが多かった。これは社長のインタビューにある通りです。ワシなんか翻訳ぐらいしか使ってなかったし。掲示板やチャットなどを使っていた女性達が最初にブログを始めた中にも多かったようです。彼女たちが、まず最初にそういう雰囲気をうまく創ってくれていた。(他社との違いとして) 機能的には、エキブロユーザー同士のコメント・トラックバックが簡易なことがあるでしょう。他のサービス会社だと一々IDやURLを入力しないとならない。後は、鍵コメですね」
会社側が提供した機能の利便性が、集まるユーザの雰囲気を作り出したと
「おそらく狙っていたとは思います。アルファギークやアフィリエイト狙いの人とは明らかに異なる層をターゲットとし、その人達は外へ広がるよりも中で安心して楽しみたいだろうから、そういう機能にしたのでしょう」
安心して楽しめるという環境を考えると、セキュリティがやはり最大の関心事です
「そうなんだよね。だから先日の非公開記事の件*は重大で、それで見切りをつけた人も居るし、不信感が残ってしまった。ただ、機能でカバーできることは限られていて、やはり自己責任のところも大きい。その辺をどこまで無料サービスに求められるか、というのは難しい」
(注:「非公開記事の件」は2005年6月のメンテナンス後に起きた一連の不具合の一つで、一部のユーザの非公開記事が20時間以上にわたり公開された問題。エキサイト・ブログ向上委員会から6月28日おしらせが上がったものの、セキュリティに関わるこの件が他の技術的な不具合と同列に扱われたことに対してユーザからの不安と不信が高まった。同時に、向上委員会からの反応も得られず、エキサイトを離れたり、非公開コメントへの影響を懸念して貴重な「鍵コメ」を自ら削除したユーザも多い。「Everything in My Life is Only for Now」ブログから山村社長宛に発せられたメッセージに山村社長が7月5日ご自分のブログで返答。報告謝罪する形で収束した。)
ユーザ間の良心の問題もありますね。荒そうとすれば、鍵コメなども武器にされてしまいます。その意味で、会社のサポートと同時に、味方についてくれるコミュニティがあることは心強く感じます
「そう、女性が多いだけに、変な奴から狙われる率も高い。昨年9月にも大事件があって、これもストーカーだったんだが、そのときはヨコの会が大活躍しました。反面、それぞれのコミュニティに対する考え方も明らかになって、絆が深まったと同時に、限界というか、付き合い方を各自考えるようなった機会だったかもしれない」
狙われたブロガーがコミュニティに守られた成功例と言えるでしょうか?
「ただ、流した血も多いし、そこで去っていった仲間も居ます」
その時のエキサイトへのSOS発信やエキサイトからの対応は?
「まずはエキサイトに依頼しました。が、一人の声では届かなかったのか、とにかく対応が遅く、自分達で守るしかないか、という感じでした。最終的にはエキサイト側で対応してくれたんですけどね。とにかく反応が遅いから、声が届いているかどうか分からないってのが一番の不安です」
同じ理由で、これまでも社長への直談判ということも何度か行われてきました
「そう、何回かやったから何の件だったか覚えてないけど、さんざん言っても対応されなかったのが、社長に直訴したら数日で直った、というのがありました。それがね、ちょっとなさけない。社長に言う前にやってくれよ、と言いたい」
窓口になっているはずの向上委員会で片付けられそうな問題もありました。告知・報告の問題は、ある意味エキサイト特有の問題でしょうか。結局社長の鶴の一声で片付くことが多いようです
「社長に言ってすぐに解決できるなら、準備はしている筈なんで、それなら何かしら告知すればみんな安心できるのに。(告知・報告の問題については)体質だろうね。ブログ以外のサービスでも同じらしいし。社員でエキブロ使っている人が少ないんだろうか? 使ってりゃ分かると思うんだがなぁ」
ユーザ・コミュニティとの乖離を感じる部分です
「やっぱりね、ソフトウェアやシステムってのは開発者自身が使わなきゃ乖離するもんだよ。対照的なのが「はてな」だね。社長以下全員が使いながら直していく。エキサイトは社長ブログも公式ブログも一般ユーザーとは別システムみたいだし」
ユーザ側のTB企画などがどれ位エキサイトに知られているかも気になります。先日のブックレビュー企画はハリーさんもなりゆきをご覧になっていらしたブロガーのお一人ではないかと思います。(注:エキサイト発ブックレビュー・コンテスト企画。ユーザサイドでは「毎日が送りバント」ブログにて再企画化され、40名を超える参加者がその再企画にTBして乗り、earll73さんに編集される形で一本の作品として、オリジナル企画に参加した。)
「(別のブロガーが)書いてたね。毎日君(再企画化をしたearll73さん)の企画書読んでないのバレバレだって」
写真を拝見すると、プリントしたハードコピーで審査されたようなんですね
「へぇー。それじゃぁ、あの盛り上がりは体感できないよなぁ」
ユーザ側にTB機能を有効に使う企画リーダーが現れ、Pick Up Blogger Interviewにも紹介されている訳ですが、それでもエキサイトとの温度差を感じる部分は大きいです
「反面エキサイトがやらないから毎日君の偉大さが際立つってのもあるし。ちゃんと遊び場の安全だけ守ってくれりゃいいんだけどね」
最近のユーザとしてのブログに対する意識はどうでしょう。最初の頃と比べて変化はありましたか?
「ワシ自身は明らかに昨年と比べて関わり度合いは薄くなった。醒めた、というか、落ち着いた、というか、もともと緩やかな繋がりが心地良いのだし、時間的にもあまりのめり込むと身体が保たないし」
ブログ初期の熱のようなものはありますね。新しく始められた方にはエネルギーを感じます
「羨ましいってところもあるけど、ワシはまぁこんなペースでいいな、と」
意識的に距離を置かないと実生活に影響が出てしまう。それくらい魅力もまたある
「うん、以前はそれでも優先度が一番だったのが、下がってきたのだな」
色々比較もされたというお話でしたが、エキサイト故の心地よさのようなものはありますか?
「う~ん… 機能的な比較だけで、余所ではコミュニティに入るまでやってないからねぇ。でも、例えば mixi なんかだと、何かの属性で繋がることが多いのだけど、そういうのが全く異なる人達が、毎日企画とかを通して交流してるってのが面白いな。ワシなんか本当は場違いなおっさんなんだけど、あまり違和感は無く一緒に混ぜて貰えてるし」
ハリーさんは初期からエキブロの様子をコミュニティ視点でご覧になっているというコミュニティの「おやっさん」でいらっしゃいますし、一方で、若手のグループの中から企画のリーダーが現れたりしている。私もエキサイト・ブログを使い始めて一年ほどになるのですが、職業も年齢層も超えて、コメントやTB、それに企画を通じて緩やかに形成されたコミュニティに参加することを今でも新鮮に感じます。
さて、今回上場一周年という機会。これは会社にとっては大きな節目だと思うのですが、ユーザにとってはどんな機会になるのでしょう。より安心できるプロバイダとして、エキサイトとユーザ間の信頼醸成を深める機会にはなるでしょうか?
「あのインタビューを読むと、ブロガーには直接的な影響は無さそうだけど、少なくとも他社とくにライブドア辺りに比べれば、ちゃんとした企業だなという印象は受けた。まぁ元々思っていたことを再確認したまでですけど。で、広告と課金とECを1/3ずつにしたい、ということだった。 広告はとにかく人が集まればいいんだけど、課金とECは会社を信頼しないとリピーターにはならないし、その人達同士が交流して口コミみたいな形で囲い込むにはブログサービスは会社にとってもユーザーにとっても大きな意味を持つでしょう。そして、ホリエモン的でないところを求めている人達を受け入れるブランドとして、エキサイトが健全に成長することは期待したい」
ハリーさんがご自身の記事内に引用されたアフィリエイト禁止などの方針にも共通する姿勢が見えるように思えます
「ただ、色んなテクノロジー、サービスが次々と出てくるネット社会で、あまり制限が多いのも不自由なんで、もうちょっと弛めるとどうなるかやってみてもいいかとも思う」
具体的に提案などはありますか?
「別に金儲けやアクセスアップには関心無いんだが、どこからどうやって来たのかとか、どういう話題を書くとどういう反応があるか、とかには興味があるので、アクセス解析はともかく、リンク表示みたいな機能は付けたいと思う。それと、ウチはそこそこ外との交流もあって、そういう広がりの楽しさも捨てがたい」
最初の問題は荒らしの防止にもなりそうですね
「難しいね。機能も必要だけど、本当のオープンになったら書けることが無くなるブログも多いだろうし」
そうですね。その意味ではGoogleロボットの検索機能(にひっかかるかどうか)も選択できるようになると嬉しいと思います
「ただね、ネット上に書く限りは絶対に意図しない人の目に触れないってのは無理なんだという意識は持った方がいいと思う。 匿名で内輪だけだからと、自ら危険な餌を撒いてしまう例も多い」
エキサイトの進化、コミュニティの熟成とともに、ユーザ側も成長して自覚すべき点がありそうです。
他にもエキブロに対して、ご希望はありますか?
「機能的にはバックアップ、というかエクスポート。それから、とにかくアナウンスだけだね。あとは好きにやらせてくれりゃいい」
最後に、エキサイトと山村社長に一言メッセージをお願いします
「いつもありがとうございます。お陰様で素晴らしいコミュニティが形成されてきています。この財産をこれからも一緒に守り続けていきましょう」
長い時間本当にありがとうございました
ハリーさんの運営される「世祓い」ブログでは、
繊細さと大胆さのバランスのとれた絶妙な切り口で、
日常、地域、IT、会社運営、サッカー、家族、仲間など
豊富な話題が日々描かれています。
また、本インタビュー記事と併せて、以下の記事も是非ご一読ください。
*「ポータルからクオリティーメディアへ--社長が語るエキサイト好調の理由」(CNET Japan)
*「エキサイト上場一周年 11月4日」
(エキサイト社長、山村幸広のインターネットブログ)
*「エキサイト山村社長のインタビュー」(世祓い)